クリエイターに必要な「技術」

最近のニュースで10代の男女のなりたい職業アンケート結果というのがありました。
中にぽつぽつといわゆるクリエイター系と呼ばれる職業がランクインしてるようです。
二次元界隈で趣味をやってますと、おのずと物作り系の職人さんや職人希望の方をお見かけする事が多いんですが、成功するひと、逆の人、その分かれ目にいる人などさまざまな人生設計模様が垣間見れて興味深いものです。
年齢的に現在クリエイターになるために頑張っている人と接する事も多く、そして既にクリエイター系の仕事の波に乗った人との接点もあるわけですが、おつき合いさせていただいていて両者の違いはなんなのか、ということについて考えてました。


イラストレーター・もの書き・デザイナーのスキルは2種類ある


この夢を追いかけている方は、ある程度「もの作りの技術」についてはご自身で研究や努力をされている方が圧倒的で、その点については練習するなり文献で勉強するなりして自分にあった消化方法で身につけていけばおのずとレベルが上がると思いますので、その点については問題ないと思います。
二次元の物作りを手掛けていらっしゃる方は創作したものへのこだわりを持っていらっしゃる方がほとんどで、人物描画に始まり着色スキルや構図にいたるまで、自分しか持っていない持ち味が「技法」であると判断されていることがあるようです。
確かに、目に見えるものは出来上がった「物」ですから、目に見える部分で差をつけたいと思うのは至極当然で自然な事です。
私も仕事上、受け渡しされるものはフォトショップのデータやイラストレーターのデータなどで、よく「これは凄いデザインだなー!負けてられん!」と他人をも奮い立たせるようなすごい出来のデザインを見る事があります。
ただ、それは見た目の話です。
渡されるものはパソコンで閲覧することのできる「データ」なので、対応ソフトで開けば中身を修正したりすることができます。たまにぎりぎりになって印刷直前に修正を頼まれる事があるのですが、私はここでプロかアマチュアかの差が出てくると感じています。
先にも言いましたが、デザインははっとするほど素晴らしいできなのです。
修正を頼まれ、開いてみて、さあ引き継いで仕事するぞといった時に、作った本人しか到底修正できない状態のデータだったらどうなるのか。
この状況、クリエイトを仕事する人またそれに関わる人にとってはかなり高レベルで避けたい現象なのです。
理由は至極簡単です。そのデータに費やされる予想外の尻拭い時間はその仕事、会社にとっての無駄な支出になっているんです。人件費をはじめ、スケジュール通りに進まなかった場合の他の仕事のしわ寄せなどなどあげれば切りがありません。
クリエイターの仕事というのは、渡された仕事が見た目だけ完成していればいいというものではありません。
自分の前後に仕事をする人ことまで考えて段取りする心掛けが必要だと思います。
「作れば(かけば)いいや」という信念の人は、結局ビジネスのさまたげになるのでよほどの何かがない限り、このご時世非効率、余分な時間や予算は避けないという事情で、デビューのさまたげになっていることも多いと思います。


■自分の作品を発売してほしい出版社・職場がぱっとでてくるか


作家志望の方に最近よく聞く質問がこれです。あなたがプロデビューして出版してほしいところはどこ?と。
ここで「どこそこ!」と即答した方は素晴らしい信念の持ち主だと思います。
「うーん…あそこ…かなあ」とか「いや決めてないよどこでもいいよ」という方、なんとなく道は見えているのだけれど、という返答の方が多い気がします。
ここでは「一つにしぼれ!」ということをいうのではありません。
作家さん自身の持ち味を生かしてくれる会社(職場)像を想定しているかということにつきます。
声をかけてくれるならどこでも…というのは、正直あまり現実的じゃないと思います。
イベントなどで編集者さんなどにん千分の一の確率で目に止まる必要がありますし、なにしろ受け身ですから、結果がでるまでの時間がかかります。それでもいい、目に止まる自信が大アリ!という方はこのコラムはあまり意味がないので飛ばして下さい(笑)
となると自分から面接なり投稿なり持ち込みなり、になると思うんですが、じゃあどうしてその会社にアタックしてみる気になったのか。
『この会社(出版社)の作者レベルなら自分も入れそう』という理由で受けている人は要注意だと思います。あとは会社の知名度とか。
分りやすくするために書籍を一例にとりますが、どの漫画雑誌でも必ず「コンセプト」があります。雑誌の方向性にはじまり対象年齢(購買層)に至るまで一冊まるごと基本部分は統一されているはずです。
方向性っていうと簡単に聞こえますけど、じゃあ「マーガレット」と「りぼん」の差はなんですかって聞かれたら、結構むずかしいと思いませんか。年齢層はマーガレットの方が高いですが、じゃあおなじ「少女漫画」なのにどうして分かれるのか、とか。単に登場人物の年齢だけの問題ではないです。
私感になりますが、マーガレットは重要な心理描写は読み手自身に想像させるものが多く、りぼんは想像範囲を狭くして事細かに人物描写をしているように思います。低年齢層でも見たまんま読めば物語に入り込めるという利点があるんじゃないでしょうか。(大人になれば作者のその奥の意図も読み込むようになってると思いますけど)マーガレット購買層の場合は、明確な答えはないけれど(ストーリー上のエンディングはありますが)、大人であればいろいろな経験をしていますから自分のなかで物語の奥底を練り上げていく楽しみを買っていると思うのです。
このように、おなじ漫画雑誌といえども作者の本領が発揮できるような地盤が違ってくる事にも注目してほしいです。どこでもいいというのは時として武器になりますが、アキレス腱にもなりえます。
作者のコンセプトと出版社のコンセプト、どれだけ歩み寄れるか、歩み寄れる限度の幅が広いかということを考えて投稿してみると、出版社側からも「この人はうちとウマが合いそう」と判断する可能性がぐっと高まるように思えるのです。デビューした後のストレスの差も比ではないと思います。
ビジネスサイドから考えてみるのも面白いと思いますよ。


ゲームクリエイターになりたいならゲームばかりするなという言葉


私も実際に見た某大手ゲーム会社勤務の方のコラムの言葉です。たしか「ゲームクリエイターになるには」というシリーズ物の就職系雑誌のインタビュー記事だったかと思います。
その当時は、ゲームが好きならゲームしまくって作ればいいんじゃない?と考えていました。先に述べた「見た目の技術」しか見えなかったからです。髪が綺麗、目が綺麗、塗方が綺麗、文章構成が綺麗、すべて見た目の技術ですよね。
では今パッケージングされている商品は何が違うのか、という事になります。
商品になるのと商品にならない差ですよね。
売り物と名前のつくものは全て「お客が買ってこそ」の代物です。お客が求めるものがあったから売れるとも言い換えられます。
「自分の持ち味はこれなんだからお客は買う!」という作品で認められるのは本当に一握りです。その一握りの一員だ!と確信している方はこのコラムは(ry
自分の持ち味が市場で最大限活かされると判断するのは自分自身でなく、買ってくれる人ということを忘れてしまう人が多いように思います。お客のいいなりになれということではないですよ?
自分の作品が世にでるには、プライドが許さないひともいるかもしれませんけれど、ある程度の「媚び」は必要だと思います。お客がつい手を出してしまう罠の仕掛け方。それは作者の嗜好ではなく、世間の嗜好を押さえる事です。無意識に世間の嗜好と合致した作者さんは爆発的に波に乗る事になりますが。運ということになりますね。

ある程度の「商品になりうる媚び」の部分を察知するには、どんな事がいま流行っていて(流行りそうで)好まれいるのか、そういった社会勉強がおのずと必要になってくると思います。○○萌え〜以前のもっと根底的な戦略構想とでもいいましょうか。
一般常識をクリエイターに求められるのは、こういった一面もあると思います。
お金が動かない=利益にならない=使えないの図式が市場の厳しい所。感情論を持ち込んでもなんの結果もでないのが現実のところじゃないでしょうか。
また、商品アイデアについても、ゲームクリエイターになりたい人がゲームやってたんでは同じ業種の中からリサイクルしたアイデアの方が圧倒的に多いですし、既に出ているゲームの二番煎じになることは目に見えるようです。
新しいことをやりたい人、機動力になる人にはちょっと向いてない気がします。素材が新しくないならできたものも新しいわけはないですよね。
発想の転換をするにあたって、ゲームからでもいいですが、それよりも刺激的な外界から美味しい所をピックアップして実にできることが重要だと思います。


■フリーの方が簡単か

これに関しては全力で否、といいたいです。
今までのコラムでは、どこかの企業に属してクリエイター活動をするという観点でしたが、これだけでも結構考えられる事があったかと思います。
企業に属している場合は、自分の担当部署(+前後の仕事のさわり)をこなしていればいいですが、フリーの場合はその仕事に関わる自分の本来の担当以外の部分も完璧にこなさなければなりません。
それこそ「作品だけできればなんとかなる」なんて考え方は自分だけでなく、その作家さんに関わった仕事のすべての人が迷惑被る事になりかねません。
それが継続的にともなればもう二度と仕事がこないかもしれません。悪い条件になっていくかもしれません。
企業とフリーではフリーの方が圧倒的に大変です。全部一人で責任もって仕事しなければなりませんから。ただしやりがいという点についてはフリーの方があるかもしれませんね。達成感をひとりじめなわけですし。
企業所属>フリーという考え方は大変危険だと思います。


趣味では許されたことが仕事じゃ許されない。
ましてや二次元作品は見た目の結果(出来上がったイラストなど)がプロ仕様のものと肉迫していることが多くなってきてます。
結果の見た目はあまり差がなくとも、裏の方ではいろいろ動いていたりするものです。
それがプロとアマチュアの一種の境界線になっていると思っています。